人に勧められて「逆説のスタートアップ思考」という本を読みました。
著者は前田隆明さんという方で、東京大学で学生や研究者のスタートアップ支援を行っているそうです。
本書は、スタートアップには直接関わっていない企業にお勤めの新規事業担当者などにも参考になる部分が多い内容となっています。
ここで「スタートアップ」という言葉についてですが、スタートアップとは、短期間で急成長を目指す一時的な組織体のことを言うようです。
ベンチャー=スタートアップではなく、「短期間で一気にスケールする」ものをそう呼ぶんですね。
スタートアップの成功にとって必要な要素はたくさんありますが、本書で取り上げているのは主に以下の3つです。
- アイデア
- 戦略
- プロダクト
これらについてスタートアップに特有の「反直観的」で「逆説的」な原則が紹介されています。
それぞれ順番に見ていきます。
1. アイデア
まずはアイデアについてですが、”スタートアップ”として優れたアイデアは、一見そうは見えないのだそうです。さらに細かく見ていくと、優れたアイデアは以下を満たしているのだとか。
- 不合理な方が合理的
- 難しい課題ほど簡単になる
- 本当によいアイデアは説明しにくい
- スタートアップの成功はべき乗測に従う
もし仮にアイデアが合理的だった場合、既存のマーケットでは成長の余地が少ないはずというのが1番の理由。これを、ピーター・ティールは「賛成する人がほとんどいない大切な真実」と呼んでいます。スタートアップはこれを見つけなければいけません。
2番は、課題が難しければ難しいほど優秀な人材が集まったり、周囲の支援が受けやすくなり、競合もいない環境でビジネスをすることができ、急成長が可能となります。
3番は、優れたアイデアは「よりよいもの」ではなく、既存とは「異なるもの」であるため、その意味自体は分かっても、意味する内容はわかりづらいのです。
4番については、スタートアップへ投資するベンチャーキャピタルというのは、ヒットを狙うビジネスではなく、ホームランを狙うビジネスであり、成功したときのリターンが桁違いに大きいというのが特徴です。したがって、大きく世界を変えうるアイデアかどうかが重要になってきます。
2. 戦略
次にスタートアップの戦略について、重要なのは「競争」を避けて「独占」することだそうです。
ピーター・ティールは、「素早く」独占するために、以下のような条件を満たす必要があると挙げています。
- 小さな市場を選ぶ
- 少数の特定の顧客が集中していること
- ライバルがほとんどいないこと
- 顧客に刺さり続ける仕組みがあること
- スケールのために必要な限界費用が低いこと
小さな市場ほど大企業は参入しづらいため、競争を避けることができますが、ニッチな市場ならよいという話ではありません。今は小さくても、急成長する市場を狙う必要があります。
そして、小さな市場を独占した後は、その独占状態を長期間維持し続け、拡大していかなければならないのです。
小さくても市場を独占するためには、「独自の価値」を生み出す必要がありますが、「独自の価値」を「独自のやり方」で作る、という二つの条件を同時に満たすことが重要です。
3. プロダクト
最後に、スタートアップにとってもっとも重要なことは、「人が欲しがるものを作る」ことです。ポール・グレアムによれば、以下の二つの条件を満たす必要があるそうです。
- 大勢の人が欲しがるものを作る
- それをすべての人に届ける
当たり前のように感じますが、スタートアップの失敗で最も多い理由は「市場にニーズがなかった」なんですね。
本書では、製品以外のサポートなどの提供価値を含めて「プロダクト体験」と呼んでいます。これらを仮説としてとらえて最も大きなリスクを抱える仮説から検証していくことが重要です。
その際、顧客の声はきちんと聞きつつも、顧客の期待通りのものを作るのではなく、その声の裏に潜む、本当の欲求が何なのかを捉える必要があります。いわゆるデザイン思考的なアプローチです。
そして、スタートアップの最初期は、多数の人からそこそこ好かれる製品ではなく、少人数の顧客が深く愛する製品をつくるべきです。
いかがでしたか?
本書には、スタートアップ特有の考え方が他にもたくさん紹介されています。
興味を持った方はぜひ手に取ってみてください。
最後に、著者のスライドを見つけましたのでご紹介しておきます。