「愛着」の問題は、イノベーションと深く関係している。
本書のタイトルとなっている「愛着障害」という言葉はあまり聞き慣れませんが、「発達障害」と診断されるケースの中には「愛着障害」のものが多いそうです。
「愛着」は、すべての人に関係があり、子どもの頃は相手によって、安定型、回避型、抵抗/両価型、混乱型と4つのパターンが現れるそうです。
そして、「愛着」が不安定な子どもはその状況を補うために、以下の3つの「コントロール行動」をとります。
- 支配的コントロール
- 従属的コントロール
- 操作的コントロール
成人になると、「愛着スタイル」が確立し、その人の生き方を生涯にわたり、支配するようになります。
「愛着スタイル」はざっくりと以下の3つに分けられます。
- 安定型(自律型)
- 不安型(とらわれ型)
- 回避型(愛着軽視型)
「愛着」の形成には0~1歳半までの間がとても重要で、その時期を逃すと安定した「愛着」の形成に問題が生じます。
「抱っこ」という行為が、子どもが健全に成長するためには非常に重要ということが分かっています。
子どもに心理的な影響だけでなく、生理的な影響さえ及ぼします。
仮に、多くの人が十分なスキンシップを与えたとしても、安定した「愛着」が育つわけではないことも分かっています。
「愛着」の対象は特定の存在でなければならず、特別な結びつきを必要とします。
この特別な存在との結びつきを「愛着の絆」と呼びます。
安定した「愛着」が形成されると、子どもは「安全基地」を確保することができるので、安心して様々な探索活動を行えるようになります。つまり「愛着」はあらゆる発達の土台になるわけです。
愛着に障害を抱える方は、以下のような傾向があるようです。
- 「怒り」が建設的な問題解決にならず、非機能的な怒りとなり、相手を精神的、肉体的に痛めつける
- 相手の意図を過剰に解釈、思い込みで即断するので、相手を迫害者として扱ったり、理想化するなど両極端
- 全体よりも部分に視点が偏り、たった一度の不快な体験であっても相手を全否定する
- 相手に対する共感性が未発達
- 自分流に固執し、過渡に意地を張ってしまう
- 自分を粗末に扱い、道化役を演じて人を楽しませよう笑わせようとしてしまう
- 親代わりの存在を求め、年上の異性を恋人や配偶者にする
以上のとおり、「愛着」が不安定な人は対人関係に何かしら根深い問題を抱えています。
その一方で、「愛着障害」にはプラスの面もあり、著名な作家や文学者には「愛着障害」を抱えた方がたくさんいます。
また、政治や宗教、ビジネスの世界で偉大な功績を残している人の多くもまた「愛着障害」を抱えているようです。
「愛着」が不安定で「安全基地」を持たないことが、常識を超えた発想につながるそうで、これは非常に興味深いと思いました。
破壊的な創造というものは、安定した「愛着」に恵まれた人にとって、命を懸けるほどの必要性がないわけですから、一般的に対人関係に問題のある役員が少ないであろう大企業はそもそも破壊的なイノベーションを起こせないということになりますね。
これは、ベンチャー企業などへ投資する際のひとつの判断基準にもなりそうです。
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