SDGsってなあに?
「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」という言葉を聞いたことはありませんか?
昨年からあちこちで目にするようになったので知っている人も多いのではないでしょうか。
SDGsとは「持続可能な開発目標」を意味する「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発のための2030アジェンダ に盛り込まれた17の目標のことです。
出典:世界の現状|NGOを支援するNGO 国際協力NGOセンター(JANIC)
持続可能な開発(SDGs)への道 - 子どもたちと考える -
SDGsをテーマにしたワークショップに参加
ファシリテーター仲間の間でSDGsをテーマにしたイベントがちょっとした話題になっていたので、私も参加してきました。
イベントのプログラムを開発したのは「こども国連環境会議推進協会」理事の井澤さんで、レゴブロックを使うファシリテーター仲間でもあります。
参加するにあたり、このイベントの参加資格は中学生以上の学生と社会人でしたので、半分くらいは学生かなと想像していました。
しかし、実際に参加してみると約35名の参加者の内、学生は1割程度だったのではないかと思います。
中学生との対話はどんな感じになるのかと密かに期待していた私のテーブルは残念ながら大人だけでした。
これまでの開催実績として学生と社会人の割合は気になるところです。
学生も社会人も楽しめるプログラム内容
プログラム構成はざっくり以下の通り。
- 自己紹介、アイスブレイク
- SDGsについてのムービー視聴
- 「2030 SDGs」というカードゲームの体験
- 振り返り
カードゲーム「2030 SDGs(ニイゼロサンゼロ・エスディージーズ)」とレゴブロックを使いワークショップ形式で、SDGsについての理解を深められるようになっていました。
とはいえ、SDGsの中身について正確に理解するようなものではなく、SDGsというものがなぜ作られ、公開されているのかといった背景について考えてみたり、なぜ世界の問題はなくならないのかという問いに対して、楽しみながら学びを深めていけるようになっています。
レゴを使ったワークショップを体験されたことがある方は分かると思いますが、ブロックを使うことで中学生からお年寄りの方まで、立場を超えてフラットに意見が言えたり、お互いに嫌な思いをせずに質問できる安心安全な場を作りやすくなるのです。
カードゲーム「2030 SDGs」とは
2〜3人に1セットずつ配られたカードは、
- ゴールカード
- お金カード
- 時間カード
- プロジェクトカード
からなります。
ゴールカードは各チームが目指す人生の目標で、チーム毎に異なります。
プロジェクトカードは最初は2枚配られ、目標を達成するためにお金と時間を使ってプロジェクトを実施してきます。
そして、会場に置かれたホワイトボードには、世界の経済、環境、社会の状況がマグネットでモニタリングされます。つまり会場全体が人間社会の縮図というわけです。
プロジェクトを1つ実施すると、新たにお金や時間カード、新しいプロジェクトカード、意志カードなど、プロジェクトカードに記載されたカードをもらうことができます。
さらにプロジェクトカードの指示に従ってホワイトボードのマグネットを増やしたり減らしたりします。こうして世界の状況が次々と変化していくというわけです。
ゲームがスタートすると、プロジェクトを実施したり、チーム間で交渉しカードを交換するなどして、それぞれチームの目標を達成することを目指します。
「2030 SDGs」を初体験
私たちに与えられたチームの目標は「1200G以上の富をゲーム終了時に持っていること」でした。
いくつかのプロジェクトを実施することで、程なく私たちは目標を達成することができました。
そして前半戦(2017〜2022年)が終了し、途中経過としてホワイトボードの状況が報告されました。
この時点での世界経済(ブルーのマグネット)は絶好調でしたが、環境問題(グリーン)と社会問題(イエロー)は深刻な状況であることが会場全体で共有されます。
後半戦(2023〜2030年)でもさらに富を増やした私たちのチームは、ゴールカードに書かれていたもう一つの目標である「得た富を十分に利用できる豊かな世界」を目指すことにしました。
お金だけ持っていてもつまらない世界は嫌ですからね。
その時はじめて環境問題や社会問題にも目を向け、それらに好影響を与えるプロジェクトに投資する意識がメームメンバーに芽生えました。
2030年にSDGsを達成
あっという間に後半戦(2023〜2030年)も終了です。
ホワイトボードを見てみると、環境と社会にもたくさんのマグネットがついていました。
前半戦は環境5、社会6と低い数字でしたが、後半は環境13,社会14と数字が大きく上がり、目標としていた「豊かな社会」を達成することができました。
その一方で、自分たちの目標を達成できていないチームが幾つかありました。
それでも目標を達成したチームが保有するカードをうまく集めることで、すべてのチームが目標を達成することは可能だったようです。
つまり、世界にはちゃんとリソースがあったにも関わらず、リソースの再配分がうまくされなかったことになります。
体験を通じて学ぶとは?
今回のイベントでは、カードゲームをする前と後に、レゴブロックを使って世界の複雑な問題がなくならない原因は何かを考えました。
これは、ゲームを通じてSDGsの達成を疑似体験することで、学びが深まる仕掛けになってなっており、「経験学習」という考え方がベースにあります。
最初は直感や思いつきで考えたことでも、オープンに他の人の意見やアイデアを聞いたり対話することで視点が広がっていきます。
最初のレゴ作品では「見えていない世界や仕組みに対する想像力の欠如」が複雑な問題の原因だと考えた私ですが、対話やゲームを体験した後に考えたのは、「経済活動を優先し国ごとに閉じた教育内容とその仕組み」でした。
こうやって短い文章で書くとレゴ作品では伝えることができた微妙なニュアンスやストーリーが伝わりませんね。
しかもどこか教科書的で聞いててつまらないのではないでしょうか?
体験を振り返ることで学ぶ「経験学習」では、体験を通じて“自分が感じたこと”を言語化することがとても大切なんだそうです。
体験に対する意味づけを自分の言葉で行うことで経験になるのだとか。
その際にレゴブロックを使うのがとても有効だと井澤さんはおっしゃっていました。
問題が解決しない本当の理由とは?
最後に、各テーブル毎にひとりずつ振り返りを行いました。
多くのレゴ作品で「壁」を表現している方が多く、「見えていない」、「つながっていない」、「コミュニケーションできてない」、「開いていない」と言った話が多く出ていたことが私には印象的でした。
それから、私もそうだったのですが、カードゲームをしていた時にプロジェクトの内容や目的のようなもの(カードの上半分)を全く見ずに、プロジェクトを実行していた人が多かったことに驚きました。
目先の(数値)目標(私たちのチーム目標はお金を稼ぐこと)ばかりみていると、何のためにやっているのかを全く気にしなくなる怖さを体験したのです。
世界の問題を解決する鍵とは?
振り返り発言をした最後に、「せっかくの機会なので学生の意見も聞きたかった」とつぶやいたところ、たまたま親子で参加していた女性の方が別テーブルにいたお子さん(中学生)についてのエピソードを話してくれました。
お子さんのレゴ作品で表現されていた「壁」が大人とはちょっと違っていたので不思議に思ってその理由を聞いてみたそうです。
大人のレゴ作品で表現された「壁」は色や形は違いますがいわゆる面のある壁です。一方、中学生の作品で表現された壁は、まるで網目のように向こう側が見えていたり行き来できる空間があったようです(残念ながら写真は撮れませんでした)。
お子さんは、「壁はあるけど、向こう側に行けるしお互いに見えているよ」と答えたそうです。
言葉では同じ「壁」を表現していても、大人とは異なる世界観を持っていることに、その話を聞いていた同じテーブルの大人全員が驚きました。
というのも、普段私たちは周りを高い壁で囲まれた世界で暮らしているわけではなく、大人のレゴ作品で表現された「壁」は私たちの頭の中にだけ存在する「壁」であるという当たり前のことに気づかされたからです。
大人はいつからそんな風に世界を見るようになってしまったのでしょうか?
もしかすると、世界の複雑な問題を解決する鍵は身近にいる「子どもたち」なのかもしれない。
最後はそんな風に思えたイベントでした。
この記事を読んで興味を持たれた方は、4月にもイベントがありますのでぜひ参加してみてください。